“大好きなバンド
2007年のROCK IN JAPAN FESの時のこと。
ぼくは、スネオヘアーのスタッフとして、初めてひたち海浜公園に行った。広い芝生のバックヤードで、久しぶりに会った多くのミュージシャンたちと
談笑していたら、ふっと空気が変わった感じがした。みんなが、さっと道を譲った先には
サングラスをかけて颯爽と歩く一人の男の姿があった。ぼくは「チバちゃん!」と、手を振って思わず走り出した。
The Birthdayのチバユウスケ、日本を代表するロックスターだ。
駆け寄りながら、ちょっと不安になった。
以前、誰かに言われたことがあった。
「年下で、ちゃん付けで呼んでんのお前くらいだよ。」
当時ぼくらは、やんちゃな若者だった。らしい。
礼儀知らずで、怖い者知らず。
「でもサニーデイの場合は、しょーがねーやつらだなーって許せたんだよね。」
先日のベース飲み会で、何人かの先輩にそう言われた。
thee michelle gun elephant解散後、
ウエノくん、アベくん、キューちゃんとは、色んな場所で会っていたが
チバちゃんだけは、すれ違ったことすらなかった。数年ぶりなのに、失礼な話だ。
おまけに、もう若者ではない。「あん?」
「しまった。」と思った。
ぼくのことを、その筋の人がやるように足下から顔まで二往復見回して
サングラスを取った。「田中じゃねーか。オメーなにやってんだよ−!」
十数年前に初めて出会ったときと変わらない笑顔で、ぼくの肩を思いっきり小突いた。
懐かしさと、嬉しさと、小突かれた勢いですっ飛びそうになりながら、
「今日はスネオヘアーのライブ制作として来てるんだ。」
と伝えた。「なんだよ、ベース弾いてないのかよ。なんで弾かねえんだよ。」
と言いながら、今度はチバちゃんが
「しまった。」
という顔をした。
「悪い。失礼なこと言った。
お前、どこでも弾きたい訳じゃないんだもんな。
サニーデイ好きなんだもんな。
あのバンドじゃなきゃベース弾きたくないんだもんな。
そんなに簡単に弾けねえよな。」その言葉で、ミッシェルの解散がどんな気持ちだったのか、
そしてThe Birthdayを始めた気持ちが少し解った気がした。チバちゃんは、本当にミッシェルのことが大好きなんだと思った。
バンドをやっている者にしか解らない気持ち。
そして、その仲間との別れを経験したことがあるものにしか解らない気持ち。
明日、ぼくがこの世で一番大好きなバンドでベースを弾く。
9年ぶりの東京でのライブ。
上野の桜は、きっと満開だ。
春。
あたらしい旅のはじまり。”
天気予報は
晴れ、ときどきテポドン。